人生堂便り---<古本案内編>----
2006年06月20日 古本案内 トップページ(このページです)の公開を開始しました。各ジャンル別のリンクページは只今準備中です。
世界中のサラブレッド(Thoroughbred)はその血統を辿ると必ず3頭の馬のいずれかに行き着くといわれています。 因みに、これを3代始祖(3代祖先)と云うそうです。 それでは世界の文学の3代始祖とは ? 残念ながらそれについて表わされた書物をいまだ知りません。 もしもどなたかご存知の方がありましたら教えていただければ幸いです。 だからどうしたと言われればそれまでなのですが・・・(^_^;) 。
大学が駿河台にあったからというわけでもないのですが神田神保町の古本屋さんを覘いて歩くのが大好きでした。もう30年以上も昔の話です。一見すると只雑然と軒を連ねているだけのように見える店にもそれぞれはっきりとした色と匂いの違いがあり、何度も足を運んでいる内に自然と行きつけの店が決まっていったように記憶しています。中央の棚の最上部に置かれた『三島由紀夫全集 特別装丁版(限定千部)』全36冊揃 金 140,000円 也 を見上げてはため息をついて帰るのが決まりでした。大卒の初任給が5万円の時代です。
その当時のことです。理由は忘れましたが或る日突然 『ユリシーズ』 を読まなければと思い立ちました。目ぼしい書店を探して歩き回りましたが一向に見つかりません(「何故図書館に行かない」なんて突っ込みは無しでお願いします。どうしても手元に欲しかったのです)。昭和初期の森田草平 訳、伊藤整 訳以来長きに亘って翻訳者もなく絶版となって既に久しいと分かったのは暫く立ってからのことでした。その日から古書店巡りは完全な日課になりました。結論から言えば、結局探し物は見つかりませんでした。が、探本のプロセスはたっぷりと堪能することができました。あれだけ歩き回った後では見つからないこと自体、素直に納得できたことを覚えています。ある種清々しい諦念とでも云いましょうか。ただ今にして思えば、それぞれの店の奥のレジ台の横でまるで制服の一部でもあるかのような渋面を貼り付けていた親爺さんたちの内のひとりにでも相談することができていたならば事情は違ってたかもしれません。でも、内気なジョニーのわたしには、そんな蛮勇のごとき猛勇など端から考えるだけ無駄だったのでしょうが。何といわれようと怖かった、いいえ、紅顔の美(?)青年時代のことなのですから ハァ。 ^^;
地方で暮らすようになってからは東京時代のような古書店巡りの楽しみとは縁遠くなってしまいました。仕事に追われ日常に埋没する日々の中でいつしかそんな空間や時間が存在していたことすら忘れていました。30年後に小さな本屋を始めることになった時、あの店の奥の暗がりに腰掛けていた気難しそうな古本屋の親爺さんの姿がとても鮮やかに脳裏を過ぎりました。いつの日にかあんなふうに年を取れたら・・・などと考えている自分に何故かほっとしている自分が寄り添っている姿が見えたような気がしました。そんな店を作れたらと考えています。
<上の写真は学生時代の蔵書の一部です。村上春樹さんの『風の歌を聴け』は1979年7月25日発行の初版本で店のお客様から調べ物のお礼としていただいたものです。>
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